愛欲小説【大正浪漫男】3
引っ越し一カ月後立夫は小雪の舞い散る寒中入りの日に引っ越した前年には関東大震災も起きており、死者10万をかぞえ家や住まいを失ったものは100万人を超えたというからハンパではない世情はまさに不景気のどん底で大阪の街も浮浪者やホームレスで溢れかえっており、第一次大戦後空前の最悪期にあるといっていいだろうそんな街中を颯爽と迎えのタクシーを飛ばし引っ越ししたのは立夫と将棋のダチである治だ・・「俺も行っていいのかい?」「話はつけてあるんだ心配すんなよおまえは無二の親友だ・・」というと安心したのかタクシーに乗り込んだダチのフルネームは倉持治と言い将棋指しだ時の関西名人を標榜する坂田三吉の愛弟子だ。風貌からは勝負師というより冴えないばくち打ちだが立夫にしたら三度の飯より好きな将棋の相手だ。手放すワケにはいかなかったあれ...愛欲小説【大正浪漫男】3